生物・バイオ関連
ブルーバックの「カラー図解アメリカ版大学生物学の教科書」シリーズ。僕の通っていた高校では物理・化学・生物の中から2つしか選択できなかったため、医者かバイオ系を目指してる人以外は生物を選択から外してた。そんなわけで僕も生物に関する高等教育は受けておらず、ちょっとした苦手意識のある領域でした。先月読んだ本の中で良さそうな本が紹介されていたので、8月いっきに読みました(正確には3巻を読み終わったのは9月頭)。いやはや、細胞の世界の緻密さに脱帽。コンピュータとかロボットなんか、まだまだ玩具だな、と思いました。しかもこういったシステムが緻密にコードされているわけではなく、相互作用の結果として自己組織化されていくようにできているあたりが、まさに神のハック。
読んでいるうちに面白くなって同分野の本を何冊か読み漁りました。その中で気に入ったのが「マンガでわかる神経伝達物質の働き」。マンガと言っても半分以上は文章で、まとめや箸休め的にイラストが入っている感じ。でも、イラストが本当に可愛くて、それに釣られてスラスラ読んじゃいました。最後の方は精神病やドラッグについての説明もそれなりに。「やわらかな遺伝子」は「教科書シリーズ」の2巻を読んだあたりで気になって読みました。「遺伝子すげー」って世界観から、実は生まれた後の環境によって遺伝子発現のトリガが押されるので遺伝子が全てじゃないんだよ、という流れに。でもまぁ、一卵性双生児の話を聞く限り、普通の世界に生まれてくれば、かなり遺伝子には引きずられますね。個人的な結論としては「やる気のでるホルモンを生成できる遺伝子が最強」という事で。個人の意思決定を本当に支配しているのは身体の状態であって「やる気がでない、気分が乗らない」という、さも脳内の意識が決定したかのような理由付けは、行動の後に脳が辻褄合わせに作り出しているという事実を知り愕然としました。寝てる間にベッドから落ちたら、落下する夢を見るのと同じ。人間は常に水面下で言い訳をしながら生きているわけです。
この辺を一通り読んで、ミクロな生物学に関してはなんとなく理解できた気がします。万能細胞がなぜ嬉しいのか、動物では何が難しいのか、とかその程度。研究室に配属されて手が動かせるレベルかと言われれば、まだまだ全然ってところ。でも細胞のシミュレーションとかも面白い分野だし、機会があれば飛びつきたいな、という感じではあります。次はマクロな方面を読んでみたい……って事で4巻以降に続く。
未来予想
Kurzweilの最新のSingularity本。……とにかく分厚い。普通の本なら5冊くらい読めそう。
技術は指数的に進化の速度を上げていく、という収穫加速の仮説を詳細なデータの元に検証。人知を越えたコンピュータが登場するSingularityとその先の未来を詳細に予測する。
仮説を裏付けるために詳細な記述がなされているが、カーツェルの予測する未来を知るという目的には冗長すぎる。かと言って専門家として理解できる分野の話を見ると「ちょっとこれは」と思える部分もあり(やむを得ないとは言え)中途半端な印象は否めなかった。
予測内容そのものは刺激的で、生き方について少し見なおそうと考えるには十分すぎる内容。ただ、倫理的な問題を考えずに人体改造を認めることで、人が順応できる生活の変化が技術革新に追いつけなくなったという重要な事実を無視している。
一方でサイエンス・インポッシブルはSFに出てくるような未来の技術をネタに、物理学者の観点から実現の難しさを語った本。Kurzweilの文章は刺激と同時に、年寄りの与太話に付き合ってるような退屈さが付きまとう感じだったんだけど、この本は科学の歴史などにも触れ、読み物としても十分に楽しめる。
後半は最新の宇宙論について結構なページを割いているので、実はSFをネタにしてより多くの人に(著者の専門である)現代物理に興味を持ってもらうよう狙った本かも。前半は編集の要望で後半は著者の趣味、みたいなパタンは多いですね。
未来予想としてはKurzweilよりはずっと控えめで、倫理的問題や人間の適応力不足に起因する進化の鈍化を考えると、100年くらいはこっちのほうが妥当な予測かも。ちょっと寂しいけど。
小説
夢野久作の書簡体短編3作が収録された「少女地獄」。これまでに読んだ夢野作品は「きのこ会議」だけで「んんんっ??」って感じだったんだけど、本作を読んでその世界に一気に引き込まれた。ドグラ・マグラ前の助走って感じで。一連の作品は、女性の社会進出が一つのテーマですかね。
冲方さんの本はファフナーのファンとして。冲方さんが普段どうやって小説を生み出しているのかが具体的に読めて楽しい。書き方講座というタイトルではあるけど、教科書じゃないです。
その他
「5つ数えれば君の夢」は東京女子流をモデルにした漫画。たった一度きりの人生をアイドルという職業に捧げることの覚悟みたいなのを重くなり過ぎない感じでストーリー化してます。「なぜ日本は若者に冷酷なのか: そして下降移動社会が到来する」の著者はパラサイト・シングル、婚活といった言葉の生みの親。日本の社会が抱える現実問題を目の当たりにした。投機でしかない高等教育、独身無職で親に寄生する若者たち、老人優遇の社会制度。数字で見るここ数十年の若者世代の収入の下がり方はちょっとシャレにならない。子供が減って当然。日本は世界で最初の「元先進国」になるのか。
最後の本はただただ残念だったので。短納期で引き受けた秒間1万アクセスのシステム。「もう先方と約束しちゃったんだから、死んでも作ってね」という日本的なノリで納品して、実際に運用したら秒間1アクセス以下で余裕でした、と。日本の品質重視が空回りする瞬間。企業ももう少し冒険した方が良いんだけど、それ以前に日本人が国民性としてリンチ好きだったりクレーマー体質なのがなんとも。日本もまだまだ民度は低いのです。
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