2014年11月1日土曜日

10月の読書

10月に読んだ本は17冊。ちょっと減った。読書の代わりに電車でニュースとかメールチェックするのを止めてたんだけど、Inboxアプリ使うようになってから通勤時間潰しちゃう事が増えた。慣れれば20冊くらいに戻って安定に入るかな。ぐっと来る本が少なかったのも敗因か。

小説

その時僕がどんな話をしていたのか覚えていないけど、同僚から「まさに虐殺器官の世界観ですね」と言われてその場で僕の図書館予約キューに入った本。ナノテク、認知心理学、チョムスキー、ミーム、遺伝子。最近興味を持って読んでいる本とテーマがモロ被り。出てくるパイソンのスケッチもどういうわけか知った物ばかり。世の中ほかにネタはないのかと言いたくなるほどの同調っぷりで、同僚の直感は正しかった。作者と世代も近いし、僕もスナッチャー大好きだったからなぁ。読み始めの印象では、文章は冗長でリズムもイマイチ、多少の読みづらさを感じさせる文体なのだけど、独特の艶めかしい死体描写と近未来の世界観にすぐに引きこまれた。文体に関しては後半になると安定してくる。構成的には伏線が少ないわりには飽きずに読めたとは思う。贅沢を言えば、死者の国をもう少しうまく書き分けられたらもっと立体的な作品になったかな、とも思うけど。ウェットな描写を死者の国側に押し込めるとか。終盤はやや疑問の残る展開もあり、最後の大きなオチに向かって強引に進んでいる感じではあったので、やっぱり伏線がもう少しあっても良かったかな。
「俺が生きる意味」のほうはガガガっぽいな、と。ストーリーらしいストーリーもないまま、いきなり化物に惨殺されまくる。アクションシーンの描写力はなかなかだけど、構成力はちょっと。読んでいて話のテンポがブレまくるのと、伏線でもないのに脇道にそれるのとで、読みながら振り回されがち。ただ、構成しっかりしちゃうと、今度はストーリーの面で物足りなくなりそうだから、良くも悪くも微妙なバランスで成り立ってるのかも。これ以上ない意外な結末で2巻に続く……どうしたものか。


まんがで読破シリーズ

先月読んだ本の中で社会契約ってなんだっけ?と思って探したら謎のまんがシリーズを見つけたので気になっていくつか予約してみた。まんがで読破……とは言うものの、読破したところで実際には各著書の序盤の主題に触れただけ。興味を持った人はぜひ原著を〜的なもの。まぁ、でも僕の場合はその程度で良いかも。
選んだ本の性格もあるけど、いまのところ必要以上に感情に訴えかける系になってる気がするので、一度原著読んでみて、どのくらい歪んで描かれてるか確認しないと……。

業界モノ

CD売れないって騒いでるけど本当に音楽業界大変なの?と思って読んでみた業界本2冊。コンテンツ市場は10兆円規模、うち音楽は5000億弱。コンテンツとしては書籍と動画でそれぞれ4割超、音楽とゲームでそれぞれ1割弱、という感じ。思った以上に書籍が強いのと、音楽が弱いのとに驚いた。コンテンツとしての音楽はまだまだ成長の余地ありなんだな、と。世界市場の約半分が日本って事を考えると、海外ではもっともっと弱い。そもそも騒いでるのはレコード会社。レコード会社を中心としたプロデュース形態から、イベント会社による企画運営を中心とし、コンテンツ配信はあくまでも広告、というモデルに移行しようとしているだけですね。レコードが出始めた頃とは正反対の力学です。
再販制度とCD+DVD抱き合わせ問題、Amazonによる既得権益への攻撃などの話題も読んでいて面白かった。
「メディアの苦悩 - 28人の証言」は新旧メディア関係者の苦悩を語ってもらい、これからのメディアについて考える、という内容。なんだけど、第一章に関しては印象操作としか思えない酷いインタビュー記事。編集後の記事で会話のキャッチボールすらできてないってのは意図をもって編集したとしか思えない。
二章以降は僕みたいに社会の仕組みを知る前にインターネットにどっぷりはまった人には考える事の多い内容。視野が広がった。

学問系

今回、この分野の読書はイマイチだった。最初の2冊はサンタフェ系のお話。科学というよりはエッセイに聞こえるし、今の僕にはトンデモと区別がつかないのが実情。もう少し入門的な内容を地に足がついた形で説明してくれる本はないものか。
「利己的な遺伝子」は完全に読まなくて良かった本なんだけど、記録のために敢えてピックアップ。「柔らかな遺伝子」とセットで薦められる例も見るんだけど、個人的な感想としては「柔らかな遺伝子」を読めば十分。フォーカスは違うんだけど、自然淘汰については現代ではあまりにも知られすぎていて、改めて読む意義は小さい。前書きと後書きだけで一冊の本になる分量には圧倒。この辺はさすが古典。
そう言えば、この辺の本を読んでいてパレートの法則とか、たんなる経験則じゃなくて、自己組織化と関連してたりするのかな、とか思ったんだけど、調べてみたらやはりそういう考え方もあるらしい。そう言えば大学でサイバーカスケードの研究してる人の話を聞いたんだけど、カスケード規模はべき乗分布って話を聞いて、こっちの世界でやったほうが良いんじゃないの、と思った。
ファインマンの本は量子電磁力学の考え方について説明した本。全然直感的じゃないものを(慣れれば)直感的に理解できるように説明してて凄い。高校物理の最後、光子と電子で混乱した頃から大学の電磁気が出てくる前の間に読むのが良いのかな。この辺り、わかってたつもりでも、ちょっと考えだすと理解を超えてる現象が多いことに気づき悲しくなった。
前から読んでた生物本の第4巻は進化論。次の5巻でシリーズ終了。生物に関して非常にざっくりとした俯瞰が得られつつある。他の専門分野の人たちが何を問題にして、どういった道具を使って謎を究明しようとしているのか、知れば知るほど面白いです。