2019年12月23日月曜日

基板修理:マグマックス

まったく起動しないやつ。数ヶ月くらい気分がのってる時にチョコチョコと思いつきで捜査を進めてました。この基板はマニュアルに回路図が載ってたみたいで資料は探せば見つかるので助かります。

起動しない時に最初に疑うのはメインCPU周り……とすぐに調査を開始したらリセットが入りっぱなしになっていました。リセットに関してはD3/R11/C21でPON後のリセット解除信号を作っており、1Eのシュミットトリガ・インバータを2段経由して68000の/RESETと/HALTに入る、という流れ。HALTは双方向なのでロジックの出力が直で入ってるのは危険な気もするけど、ダブルバスフォールトは絶対に起きない、という設計なのかな。/BERRがpull-upされてるのでそれで良い気がするけど、たくさんの信号が束ねられた上で共通のレジスタでpull-upされてるので、ぶら下がってるチップのどれかが壊れると入力が不安定になりそうではある。その辺が今回の故障部分の原因かもしれない。故障はこの1Eのシュミットトリガ・インバータでした。

1Eの交換後はバスが動き始め、メインCPUはそれっぽく動いている模様。余裕の修理かな?と期待してたんだけど、画面はまだでません。音も確認したけど無音。


しばらく放置したのち、音が出てないのと電圧がやや下がり気味なのもあり試しに電コンの全交換。よくタイムラインで電コン交換修理の報告をみかける岩崎さんからアドバイスをもらえたからってのもあった。


同じ故障基板を買い漁る系なんだけど、なぜか今まで自分が引いてるのはロジック系の故障が多い。そして今回もこれだけでは状況は改善しませんでした。

画面がでないと気持ちが高まらないので画面周りの信号の確認を進めます。画面は故障のヒントになる情報も多いし。で、まずはCSYNCを観測してみたら、なんと7.791kHzという半端な信号が出ていました。期待では15.58kHzと59.5Hzの混合が出てるので15.58kHzが観測されるはずなんだけど。という事で同期信号合成回路を遡って確認。SYNC生成部はCPU(2)の図面にあって、11EのNANDがV_SYNCとH_SYNCの合成、V_BLANKとH_BLANKの合成をやってます。負論理のORで書かれてるけどチップは等価なNANDなので紛らわしい(けど、意味は負論理のORの方が素直)。で、確認したらこの時点でV_SYNC/V_BLANKの入力が壊れていました。V_SYNCが7.791kHzだったため、7.791kHzと15.58kHzのORでデューティー比1:3の7.791kHzが出力されるわけですね。

そのままV_SYNCの生成を追いかけます。VIDEO BUSを通って裏ボードに回ります。VIDEO BUSの裏ボードで見た際の33ピンがV_SYNCです。34ピンがV_BLANK、31/32がH_*です。回路図で見るとMAGMAX_VSCで、/V_SYNCと表記されてるのが出力。CPUボード側の図面ではバーなし表記だったので紛らわしいけど、同一信号。

V_SYNCのタイミング生成では、裏ボードの3A、4A、5Aの3つの4-bitsカウンタを使って9-bitsのカウンタで表示ラインを数え、最上位桁がV_SYNCとして出力される。カウンタの初期値が12'b1110_1111_1010に固定されているので、最後の繰り上がりでカウンタが初期値に戻る事を考えると262カウント。15.58k/262=59.5Hzになります。この論理が壊れているわけですね。

信号を確認すると3Aに入る前段からの入力が中間電位に浮いています。4Aの出力を見ると全て中間電位を出しているようなので交換。手元に74*161の在庫がなかったけどリセットはpull-up固定だったので、リセットしない限り機能的な差はないはずの74*163を使って実験。


お、モニタが同期を拾った……けど何か変。BGMが早巻きで鳴っているので、これはおそらくV_SYNCが4倍の速度で出ているのではないか……と想像。画面も4分割だし、V_SYNC割り込みで演奏してる演奏も4倍速になっているのでは、という推測から。

4倍速になってるなら下位ビット担当がおかしいのかな、と5Aを確認したら出力がやはりおかしいのでこいつも交換。やはり高速に回ってるカウンタは壊れやすいのかな。達人のスプライト周りのカウンタも壊れやすいみたいだったし。



おっしゃ、直った!!

と思ったのも束の間、この体たらくです(笑)



あちゃー。スクロール値とBGパタンの読み出しラインがうまくライン毎にインクリメントされていないような感じですね。それと不定期にメインCPUにリセットがかかる。

もうしばらく修理は続きそう……って事で数日後にラスタースクロール周りの調査。まずは前回見たV_SYNC生成回路の後ろでデータが壊れていないかの調査。ここはINV線を見て通常画面と反転画面用の回路が選択されるようになっているので、2Pで動かしてみて画面反転時に結果が変わるかの確認でスキップ。同じ問題が出てました。なので次はスクロールと画面縮小のパラメータを格納してる表基板18B/20BのEPROMを確認。データは壊れてないけど、どうやら入力アドレスのA7(pin 3)が浮いている模様。


こんな感じで中途半端な電位をフラフラ……と他の入出力に影響されながら。典型的な故障パタンですね。追いかけると19Aと20Aでスキャン中のオフセット付きライン番号にスクロール値を加算してEPROMのアドレスに入れる、となっており19AのΣ3が該当出力ピン。という事で交換してみたところ……


正常動作するようになりました。この手の283も壊れやすいなぁ。

ただこの子、実はメインの68000が少し不安定で。電圧あげないと頻繁にリセットがかかってしまう。裏面の電源とか見てるとノイズも多く、電圧も4.6Vくらいまで下がってるので、他にも壊れた素子があって大きめのリーク電流が流れているか、そもそも電源容量が心もとないのか。安定して動かすにはもう少し調査が必要。ボタン2で早送りした時にノイズがいっぱい載るんだけど、これはこういうモノ?

→その後、自作じゃない環境で試したら低い電圧で安定動作。改めて確認してみたら、むしろ電圧低い方が安定する様子。


こんな感じで普通に遊べたので良しとする。

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