エンターテイメント
「夢をかなえるゾウ」は確かホリエモンが「こんな本が書けちゃう水野さんが憎い」みたいに言ってたので図書館キューに入れた本。半年くらい待ってようやく順番が来た人気の本。いわゆる7つの習慣に集約されるような堅苦しい成長の秘訣を、ゆるーいガネーシャさんを通してじわじわっと脳に染み込ませてくれる。こんな本が書けるんだな、って驚いた。真面目ぶった頭の悪いビジネス書とは正反対のおふざけ優良図書。内容的にはガネーシャさんも言ってる通り、どこでも言われてる話です。
「アンドロイドは〜」の方はタイトルは有名だけど、ブレードランナーの原作だったり、Android Nexusシリーズの元ネタだったりするのは最近知った。そしてブレードランナーって事はスナッチャーだったりサイレントメビウスだったりが持つ世界観、憧れの退廃的近未来都市です。チューリングテストに合格するアンドロイドがボチボチ登場するようになった時代の、アンドロイドとそれを狩る賞金稼ぎの話。前半の世界観の説明は退屈だけど、最初のNexus 6との対峙あたりから止まらなくなってくる。自分がアンドロイドだと知らないアンドロイドとか、ぐっと来る。
視野を広げる
「歴史をつかむ技本」は今月読んだタイトルと内容がずれてる本の1つ。大人向け教科書の流れに乗ろうとして編集が煽ったと想像してるんだけど、ちょっと残念。実際の内容は歴史研究を仕事としている人たちは、どうやって歴史を紐解いているのか。教科書に淡々と書かれた史実は、何を起源にどうやって事実と認められてきたのか、という歴史研究の裏舞台に関する本。その題材として、魏志倭人伝を拠り所にした古代、正史を持つ平安時代、私的な記録も多い戦国時代などを扱っている感じ。一応、歴史の流れというか、普遍的な何かを知りたい、という想定読者の問には答えようとはしているんだけど、オマケっぽさはある。歴史研究について知るにはとても良い本だと思いました。年寄り向けじゃななくて、未来の学者に向けた本として、魅力的なタイトルで売りだして欲しい。
「フラクラル幾何学」はマンデルブロ自らが書いた本が出ているって事で、ちょろっと流し読み。難しいし。物体と観察者の距離によって実効的な次元が違ってくるでしょ?って説明は直感的だった。はじめからコンピュータ使ってCGやシミュレーションと絡めて研究が進んで来たってのも新鮮に思えた。学問って太古の昔からあって、創始者に対するリアルなイメージを持ちにくいんだけど、ここ数十年で誕生した分野の話を聞くとやっぱり不思議な気持ちになる。
「社会契約論」は先月の漫画で読破シリーズの補完としてピックアップ。なのだ調で書かれているけど、女性らしい靭やかでユーモアのある文体になっていて、硬い内容もわりと読みやすく感じる。ルソーが知りたくて読んでみたけど、ルソーの部分は少ないし難しかった。漠然と論説を追うことはできても意図まではなかなか。けど、有名な割には他の思想家に比べて無鉄砲で粗野な印象。一方でホッブズの物体論はちょっと面白い。自然科学の論法をいち早く政治の世界に持ち込んだってことらしいけど。個人を捉える際、精神は物体と同じように個別の反作用の積み重ねによるもので、個々の反応は恐怖などの根源的な感情に基づく反射と、経験・記憶との比較による判断とに分けられる、という解釈。言葉は少し違っても最新の認知心理学の理解するところと一致する。ちょっと哲学に興味が出てきた。
ってところで続けて読んでみたのが「あなたを変える七日間の哲学教室」。タイトルを間違ってしまったもう一冊の本。邦題が中途半端な自己啓発書みたいに変更されちゃってるせいで、正しい読者にリーチできていない印象。原題は「哲学者のように考える - 7日間のガイド」。第一級の現役哲学者による著書。読者と哲学者の対話の形で、哲学が対象とする問題をわかりやすく議論。〇〇学がどうのとか、誰それの考えといった事を体系的に説明する事はなく、哲学全体を説明する上で必要ならば軽く触れる程度。哲学の概念を知る上での取っ掛かりとなる本で、途中で理解につまずく事もないように書かれている。色々な分野で見かける囚人のジレンマ、哲学の視点で見ると、社会契約の話に繋がるってのは読んでいて「おぉ、そうか」と。他の章では神経科学、言語学などとの繋がりも見えてきて学問は色々なところで繋がっているんだな、感心しました。アリストテレス「厳密性を求めるなら、そのことがらにふさわしい程度の厳密性を求めるのがよい。教養のある人は、どのことがらにどの程度の厳密性を求めていいかを知っている」という言葉はこの本の中で気に入った言葉の1つ。普段、計算機を相手にしていると、つい全てが完全でなければいけないという勘違いをしがちなので。自分への戒めとして。さらには過度な品質管理をお家芸として衰退した日本の製造業に対する戒めとして。イヌイットの自立できなくなった両親を流氷と共に流す慣習の話は、本編とは直接関係ないけど、今の少子高齢化社会で行き詰まった日本に生きる者としては刺さる内容。あとがきの自殺についての話もそうだけど、日本はもう少し西洋哲学的な考え方を積極的に取り入れた方が良いのかもしれない。儒教的な道徳観、教育制度との対比として。もともと純粋に哲学的な話に興味があって読み始めたんだけど、最近受けてるグローバル・コミュニケーションの研修での問題と重ねて考える事が多かった。
どうする日本系
危機感持ちつつも自分は安全な場所に逃げこんじゃってて卑怯なんですが。自分なりの考えは持ちたいな、とは思っているのです。ってことで、どんな事を考えてる人がいるのかな、この10年日本は何を失敗したんだろうってテーマで選んでます。この手の本は図書館キューが長いので、思い出した頃になってポツポツと手元に届きます。後者について言えば、自分が「これはもう駄目だ、どうにもならない」って見限って来た物が、世間ではどう判断されてるか。それを確認したいというのも正直なところあります。
で、まずは「日本の論点」から覚えているテーマについて徒然に。
最初の論点はバブル後の日本経済について。ケインズのマクロ経済が一切通用しないグローバル資本主義について軽く触れている。じゃぁ、いったい何が起きてるの?って点については、藤沢数希の「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」が詳しかったな、と今になって思えました。同著者の他書は今のところ微妙なんですが、この本だけは良い気がしています。
地方分権問題については橋下は俺が育てた、的な話なんですが。大阪都構想みたいなのは背景を全然知らなかったので中立的に読みました。結局はゼネコン絡みなのかもしれませんが。
憲法については知識の修正が必要になりました。「占領軍が間に合わせで作った英文を無理やり翻訳したから、文章がめちゃくちゃ」みたいな批判をしてるので、あれ?と。たぶん池上さんの本で読んだ気がするんだけど、実は日本国憲法って民間の憲法研究会が提出した案を元にしてるんだよ、って話があって。そっちに理解が振れてたので。調べてみると「参考にした可能性もある」くらいの論調が安全みたいですね。ただ、それは別としても、実質憲法改正が不可能になってる現状は深刻だな、と思いました。
震災を起点とした原発問題。1,000年に一度の大震災を想定してインフラ整備とか馬鹿げている、というのは全くその通りだと思う。公共事業で道路の補強やっても投資になってないし、下手したら投機ですらない。稀な有事にはある程度の被害を受け入れる覚悟が必要かな、と思う。僕ら人類、期待値を計算したら飛行機事故で死ぬ確率よりも巨大隕石落下で人類滅亡に巻き込まれる可能性の方がずっと高いという話もある。わかりやすい災害にコスト割き過ぎなんですね。ただ一方で、そういう事実はあるにしても原発にはまだまだ対費用効果の高い安全対策がたくさんあるはずで。そういう事を考えて実行できれば良いのですが。世間の風当たりは良くないですね。大衆は理屈ではなく感情で動くので。まだまだ人類は野蛮です。
新しいお家芸については、みんなわかっちゃいるけどノーアイデア。バイオ、ナノテク、ロボットみたいなシンギュラリティに繋がるような研究は戦略的に研究してきたはずなんだけど。蓋をあければSTAP細胞事件だったり、外資系企業に買収されたり。宇宙開発とかもっと盛り上がらないかなぁ。
「半導体衰退〜」は元半導体エンジニア、現在コンサルというバックグラウンドを持つ著者による執筆で、技術的にもかなり細かい事が書いてあった。基本的な論調は「日本は垂直統合が強みになったアナログ時代のノウハウは蓄積していたが、主戦場がデジタルに切り替わりその恩恵として分業が可能となって以降、開発体制の切り替えが遅れて競争についていけなくなった」というもの。垂直統合=アナログ、分業=デジタルって切り口は自分にはなかったですね。デジタルでも垂直統合できればそっちのほうが有利だとは思うんですが。そのためには半導体プロセスでも世界一を競えてないと駄目。土台が転んだから上に乗ってる全てがぽしゃったわけで、どちらかと言えば不採算部門をサクッと切れない日本の雇用体制の問題だと思うのです。社内政治的にもそれこそ増税したら解散必至な内閣と一緒で、刺される前に実行、運良く実行できてもいずれ消される、みたいな。
あと現場の雰囲気で言ったら、末端の現場が力を持ちすぎていた事が、寿命を縮めたかな。研究より開発、開発より品証。過去の成功体験に強く縛られた近視眼的な経営判断を続けた結果、技術への正しい投資ができなくなってしまった。現在抱え込んだ技術者を大切にするあまりに、時代の変化に合わせて体制を変えることに二の足を踏んでしまった事が大きい。いずれにしても雇用制度に本質的な問題がありますね。
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