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2016年2月4日木曜日

2015年10月〜12月の読書

10月は8冊、11月は3冊、12月は4冊……って事で低空飛行が続いてます。まぁ、読む数が減ると、自然に投稿頻度も減るって感じで。2014年は後半から読書を再開して141冊だったんですが、2015年は通年で94冊だそうです。で、おそらく2016年はもっと減らすつもり。というのも通勤時間を読書にあてていたのですが、今年はTOEICに再び注力してみようかな、と思いまして。なんか900軽く超えてるくらいじゃないと色々と生きるのが辛くて。まぁ、そんなわけで2016年は怪しげな英語学習ブログよりはリアリティのある学習体験談が書けたら……とか思って学習計画実践したり公開テスト受けたりしております。

娯楽

「あいどる・とーく」は個人出版モノですね。Google+上で活動を展開している(で、あってるのかな?)日本独立作家同盟さんの群雛って雑誌があって。実は最近わりと読んでました。掲載にハードルを設けてないわりには結構面白い作品があって。その中でも神楽坂らせんさんは良作を定期的に投稿されてる方。
SF短編で、うるっとくる良い話でした。主人公のとある設定を効果的に使いながらアイドルに普遍の孤独感をうまく表現しています。中間部の断片的な文章を重ねた表現方法も、主人公の設定や背景とあいまって良い雰囲気が出ています。結びも適度な読後感が刺さってきて良かったです。いくつかの解釈が頭の中をぐるぐるして、最後の何ページかを読み返しちゃいました。

「風の歌を聴け」村上春樹のデビュー作。本当はタイトルに惹かれて「羊をめぐる冒険」を借りてたんだけど、先に読んでた妻が「3部作の最後の作品だからこれだけ読んでも……」とか言ってたので、自分はそっちは読まずに最初の作品を読んだ、という。デビュー作からこういう空気を出せてた人だったんですね、なんか感心。引き続き3部作を読破したいけど、今年ペース落とすからだいぶ先になりそう。まぁ、人生は長い。

「天冥の標VII 新世界ハーブC」遂に創世記かぁ。以前の巻では万能な少年として描かれていた少年が、ここにきて人類滅亡の苦難の前に立たされ、ただの人に成り果ててただれた生活を……。こういう展開が書けるのが小川さんの凄いところだと思う。このまま読書のペース落ちれば、執筆に追いつく事は当面ないかな(笑)。まだ読み終わりたくない作品なんですよね。



教養

「コトラーのマーケティング思考法」マーケティングの人のバックグラウンドを少しでも知りたいなぁ、と思って選んだ本の1つ。垂直思考、水平思考についての教科書。読んでみて、市場っていうのはこういう考えのもとで焼畑農業的に刈られてきたんだなぁ……という思いとともに、限界まで細分化された今でも未だこの考えに縛られて部署の生き残りを考えてる組織が多いんじゃないかと。そんな風に感じました。古典として知っておいて損はないかもしれませんが。あとは単純に一人ブレストしたい時にも使える手法、ていうか、なんか別の本でそういうの読んだ気がする。

「スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 マクロ編」なんか人気あるっぽいティモシー・テイラーの本も読んでみた。本格的な本に見えるけど、たぶん基本的なところを概要だけって感じだと思う。基本的には良い本なんだけど、改めて「この世で一番おもしろいマクロ経済学は良書だったんだな、と。あっちはもっと薄い漫画なんだけど、改めてこっちの本を読んでみても新しいことを覚えた感じはしませんでした。

「住まいの解剖図鑑」家にあったので読んでみた。昔妻が家を建てた時に読んだらしい。住宅の設計について、建築家はどんな制約のだけでどう考えてデザインしているのかを、普通に人にもわかるようにゆる~く解説した本。建築家を目指す若者と家の購入を検討している人、双方に向けて書かれた本だそうです。物の配置に関する話題が多いので、借家の人が読んでも家具のレイアウトなんかの参考になると思う。オフィスのデザインをどっかの事務所にお願いする、なんて場合にもこれを読めば適切なダメ出しができるようになります。



技術

「表現の技術」タイトル的には映像表現についての本のようにも見えるのだけど、実際はCMの映像制作を専門とする著者が、脚本の書き方の要を優しく説いたような本。コンテで考えるところが映像制作屋さんぽいところだけど、内容的には大衆小説執筆のイロハを書いた本と同じような事を言っています。小説家を目指す人向けの本よりは文字が少ない分、すっと頭に入ってくるかもしれません。

「Unreal Engine 4で極めるゲーム開発」非常に良いUE入門書。学ぶ順序も良くねられているし、職種によって読むべき章を限定して、必要に合わせて読む順番を変えられるような工夫もみられる(エンジニアは結局全部必要ですが)。覚えることの多いGUI操作も、必要に応じて説明があるので無理なく退屈もせず覚えられるのが素晴らしい。これで飛ばし読みOKなんだから、相当構成には苦心してるはず。筆者が昔好きだったゲームブックの話が時々出てくるけど、この解説書自体がまるでゲームブック。
若干誤植が多いのが難点ですが、ハンズオン的に読んでいく分には、多少トラブルありながら進めていくほうが身につくので目をつぶりましょう!ただし、UEのバージョンは本書と揃えて読み進めた方が無難かも。たいして違いはないだろうと最新版の4.10.1で始めたら、所々細かい違いがあったり、Blocking Volumeがうまく不可視になってくれなかったり、結構はまって後悔しました)。
チームによる大規模開発におけるノウハウ(工程、作業プロセス、運用Tips)や心構えなんかも書かれていて、大手ソフトハウスの様子を垣間見ることができます。
ある程度ゲーム作りのパターンは知ってる人がUnreal Engineについて一通り学ぶのには最適な本かと思います。逆にジャンルごとのゲームの作り方、みたいな事は一切書かれていないので、そういうのを期待してる人は別の本を探した方が良いかと。
ちなみにそれなりのプログラマでゲーム業界経験もある私ですが、全部まじめに読みこなすのに100時間以上かかりました(バージョン差異でハマった時間も含みますが)。

「OpenGL ES 3.0 Programming Guide」GLES2.0の本は日本語版を持ってた&それでGLを覚えたんですが、3.0は重複する部分も多いし、日本語すぐには出なそうだったので、とりあえずKindleで買って読んでみました。まぁ、紙の日本語版、デジタルの英語版が揃ってると、必要な時に調べるのにも楽かな、とも思って。一応全体を通して読んでみたんだけど、日本語版読んだ時に理解できなかった影の計算方法とか、今度はようやく理解できました。英語のほうがゆっくり読むのと、論理の筋道がすっきりしているのと、あと2度目なのと。全部の相乗効果ですかね(笑)。


2015年10月1日木曜日

2015年8月/9月の読書

8月に5冊、9月に11冊。9月は育休だったんだけど、料理にハマったりしていて思ったよりは読書に時間を使わなかった。でも、今期は読んで心に残る本の比率が高かったねー。レビュー件数がやたら多いもの。

教養

「国家の品格」を読んで、学生の頃に憧れていた教養人のイメージを思い出した。
きちんとした文化人としても人格を形成せずに、論理だけを振りかざすことがいかに無粋か。自己弁護のための論理、成果主義という名の差別。
日々直面して頭を悩ます矛盾の数々について、頭を冷やして考え直す良い機会になった。成功しているからって正しいとは限らないし、真似して同じ結果が出るわけでもなし。誠実に生きるのが一番かな。

「現代語訳 武士道」は国家の品格の中で触れられていて気になって手にとった一冊。恥ずかしながら、お札にまでなった新渡戸稲造がいったい何をした人なのか、今まで知らなかったのです。
日本人の道徳観を世界に向けて発信した本書は、武士道をキリスト教や西洋の文学、哲学などと比較しながら、決して野蛮なものではなく、欧米の道徳観と比べて勝るとも劣らないものである事を説く。
海外の人と付き合っていると、想像以上に日本への関心が高い事に驚く。経済的な力が衰えてもなお、文化的な側面への興味は尽きない。日本文化に対する尊敬の背景にあるのは過去の偉人の努力の賜物である、と改めて感じた。
開国の時代を生きた人の生の声、切腹を見た外国人による記録など、今を生きる日本人にとっても刺激的な内容が多い。

「図解・標準 哲学史」はしばらく前に哲学が気になった時に図書館キューに突っ込んでいた本の1つ。古代ギリシャはさらったので、もう少し長期に見渡してみようかな、と。著名な哲学者、学派あるいは運動について見開きでざっと説明する感じなので、まったく知らなかった時代に関して記憶に止めるのは困難だった。事前に各論を知っている時代については体系的理解に役立つ。もう一度この手の本を読めば感覚がつかめてくるかな?
しかし、以前は哲学というと物理学が産まれるより前の学問っていう印象が強かったんだけど。これを読むと最先端の宇宙論ですら近世~近代哲学の想像力の域を脱していないというか。わりと最先端科学のルーツになってたりするんだな、と感心した。



科学

「意識をめぐる冒険」は「意識」に関する最新の研究について紹介した本。
ディープラーニングの盛り上がりから機械に人格が生まれるのも時間の問題か、みたいな雰囲気になりつつあるけど。知能と意識の間には、まだまだ大きな隔たりがあるのだと気付かされる。

「動的平衡」は以前読んだ福岡さんの対談本が面白かったので、そのうち読んでみようかな、と思っていた本。「意識をめぐる冒険」と続けて読んだのはタイミング良かったかも。「意識をめぐる冒険」では「人の腸には脳細胞と同じくらい複雑な神経網があるが、果たしてそこには独立した意識が存在し得るのか」みたいな話が出てくるんだけど、「動的平衡」では「ミミズに脳はなく、消化器系の神経網が学習で身につけた反応に従い活動している」という話が出てきて衝撃を受ける。脳と腸の神経網の差異なんて些細なものなのかもしれない。消化器系が進化して意識の所在になってるような知的生命体も在り得るのかも。それこそニコちゃん大王とか。鳥山先生、偉大過ぎるでしょ。

「死ぬまでに学びたい5つの物理学」はちょっとタイトルに偽りあり。この本で学ばせたいのは物理学じゃなくて、偉大な物理学者たちの人生ですね。特殊相対論に関してだけは例外的に前書きに書かれた目的に近く、簡単な数学を用いつつも、きちんと数式で物理を理解しよう、みたいな内容なんですが。それ以外に関しては物理学についての解説書ではなく、パラダイムを変えるような5つの物理学を樹立した物理学者たちの人生・人物像について書いた本でした。端的に言えば、アインシュタインを除き、みんな屈折した人生の中で不幸な最期を迎えている感じなのでアレですが。

「サイコパス・インサイド」はあまりにも日本語訳が酷くて、点数的にはかなり低く付けた本。英語の文法むき出しだったり、直訳だと分かり難い二重否定・三重否定の文が出てきたり、そもそも訳文があからさまにおかしかったり。ちゃんと編集ついてるのかすら疑うレベルでした。加えて原文も時系列で行ったり来たりな感じで。相当に読みづらいです。
ただ、それ以上に内容が興味深いというかズルい。脳のPETスキャンからサイコパスを見分ける特徴を発見した学者(著者)が、別の研究で自分の脳を調べたところサイコパスの特徴を備えていることを知り……という前振りだけで読まずにはいられない。
内容を読むと、本人は自分の正常さを語るつもりで武勇伝エピソードをアレコレ書いてるんだけど、やっぱり本質的に感覚が壊れてて怖いなぁ、と思いました。「車とか何回も盗んだけど、ちゃんとすぐに返したよ、別に悪い事してないでしょ?」みたいなノリ。あと、しれっと書いてあるけどサイコパスの軍事応用研究みたいな話が出てきて、やっぱアメリカ怖いな、と。兵士の脳を操作して社会モードと殺戮モードを切り替えられるようにするとか。確かにちょっと前にペンタゴンで脳神経の軍事応用に関する予算がついた話とかニュースで見た気がする。記憶の操作とか。
最後の節では共感できないなりにも普通の人の感覚を学びながら周囲の人とうまく暮らしていこうとする著者の努力が書かれていて、不活性になっている脳の部位を他の部位で補える可能性も感じたりも。サイコパスって色盲とかと同じくらいの比率で存在するわけで、社会としても何かしらのケアが必要なんだろうな、と思うし。以前読んだ「プライドが高くて迷惑な人」とかに出てくる例もサイコパスっぽいなぁ、ってのが多々ありましたね。世の自殺やイジメにもわりと影響しているんじゃないかなぁ。
そうそう、脳の補完の話では今期読んだ「生まれながらのサイボーグ」って本も面白かったです。レビューからは落としちゃったけど。カメラの映像をCPUの足みたいな電極にマップして舌に載せてると、わりと短時間で味覚で空間認識して物を避けたりできるようになるとか。人間の脳ってわりとセンサーに関しては融通が効くっぽい。




お金の話

有名な「イノベーションのジレンマ」。良書だけど冗長だったので、ざっと読んで構造を理解した。高度成長期の日本が知らず知らずのうちに実行してきた事なんだねぇ。以前読んだ韓国企業の成長に関する本の内容を思い出す限り、最近の韓国企業もこれにならって急成長した気がする。
「図解 山崎元のお金に強くなる!」は資産運用について今まであまりにも無頓着だったので少し勉強。外資でストック貰ってると、 株はそのまま放置してても税金だけは現金からがっつり払っていくので。気づくと資産のかなりの比率を自社株が占めるようになっちゃって。怖い怖い……。



娯楽

「天冥の標」は引き続き読んでます。最近「意識」の本とか読んでるのも、わりとこの影響が大きいかも。

「これが最後のワイン入門」は知識をただ体系的に並べただけ入門書とかと比べると、文化的・歴史的背景を順序立てて説明してくれているので頭に残る情報が多かった。
テイスティングシートとか、今後どうやって楽しみを増やしていくかの良い指標になりました。
あと、美味しい飲み方とかは即戦力の情報。結局、読んですぐにワインセラー買ってしまった。

2015年8月16日日曜日

2015年6月/7月の読書

また溜めちゃったかなぁ、と思ったけど今月はまだ終わってないので2ヶ月だけだった。6月に6冊、7月に3冊の計9冊から……少ないけど、まぁいっか。

SF

天冥の標は読み続けてます。5巻でいよいよ太陽系外生命体について詳しく書かれる事になり、全ての背景設定が出揃った感じ。6巻がいよいよ三部構成で太陽系を舞台にした一大惨事の始まり。これ書いてる時点(8月)ではPART2まで読み終わってますが、今後も目が話せない感じ。

それとは別に伊藤さんのハーモニーも読みました。こっちも完璧だった。虐殺器官の頃のような文体な未熟さもなく素直に面白かった。国家の品格で言うところの近代的合理精神の限界に対する近未来で起きる1つの皮肉な解、あるいはシンギュラリタリアン的発想の人類補完計画。情報インフラってこういう怖さはあるよなぁ、と思う。まぁ、合理的な判断ってモノ自体が幻想だし。生物の進化の根源も非合理やカオスにあるのでその辺は物語として読む感じ。判断ってのは世界をどの切り口で覗きこむかで決まるもので、絶対的な真実があるわけでもないし。ニューロンだって非線形じゃないと学習できない。しかし、著者の若い死が悔やまれる。

政治・経済

こっちもシリーズで固定化しちゃったけど池上さんの4と5。追いかけるように読んでるわけだけど、近い将来として書かれた話題が、まさに今の問題になっていて、世界が大きく動いているのがわかる。読んでいて面白くないはずがない。最近、常々思うんだけど、人の一生の50-100年って言うのは人の歴史と比べてもずいぶんと長いんですね。日本の歴史で考えても、ある程度しられているのは1500年程度。その1/15程度をリアルタイムで体験するわけで、その間に歴史が動かないはずがない。

2015年6月15日月曜日

2015年2月〜5月の読書

プライベートで忙しくなった関係でぐっと読書数が落ちてしまいました。2月から5月にかけて、3冊、9冊、3冊、8冊の計23冊。

政治・経済

1月に続けて池上さんの知らないと恥をかく世界の大問題シリーズ2、3。やっぱり面白い。一部では分かりやすく説明するために、無理やり身近な出来事に比喩してる部分もあって、そこまでは必要無いんじゃないかなぁ、とも思える部分はあった。重要なトピックはシリーズ中にも繰り返し出てくるのでわりと記憶に残ります。しかし、世界ってのは全然平和なんかじゃないんだな、と実感します。あと、ギリシャ問題とか見るとゴールドマンサックスがいかに酷い会社なのかわかる。
続けて藤沢数希さんの2冊。この著者、経済の本は読んでいて手応えがあったので、試しに別の分野も読んでみた。まずは反原発の不都合な真実。やはり文章が面白く、理系ということもありデータがしっかりしていて読んでいて安心。例の震災であれだけの事故を起こしたとは言え、冷静に分析すれば他のエネルギーよりも何桁も安全ですよ、という主張。池上さんの本の内容とも被ってくるんだけど、石油の購入ってのは思っている以上に血生臭い話で。採掘に関して人が死にまくってるのもそうなんですが、普通に米軍の第五艦隊の牽制あっての取り引きなんですね。そもそも原発にしたって、それを持つ事自体が軍事的な牽制の意味合いもあったりする。エネルギーって政治なしには語れないのですね。現実的な解になりうる選択としてはメタンハイドレートあたりに期待できるのかもしれませんけど、環境には優しくないですからね。それに近隣諸国との火種にもなりかねない。クリーンなエネルギーとしては地熱とか日本に持ってこいだとは思うんですが。まぁ、原子力村からの圧力はあるのかも。外資系金融の終わりはまぁ、読み物として。どういう仕組みで自分の給料が決まるのか、改めて冷静な視点から考えられるかも。決して実力に比例するものじゃないんですね。
最後は会社が消えた日。これはもう日本のメーカーに残っている人は絶対に読んでおくべき本。ゴールドマンサックスによって会社が食い荒らされていく様子がまざまざと。この本読んだ後だとRolandのMBO問題なんかもちょっと見方かわってくるなぁ。まぁ、家族経営でダメな経営してたという事実は否定しようがないみたいだけど。あと井植会長の話で、日本は仕組み的に創業者が資本家になる事が難しい。だから会社に同族経営としてしがみつくしかないんだ、という話は当事者の話としては説得力があった。あとは会社内の見苦しい潰し合いとか。サラリーマン上がりで経営に参加させてくと、どこも似たり寄ったりだなぁ、と思いました。残念。
という事で、なんかバラバラに読んでた本が、なんとなく線で繋がるようになってきた気がする。



SF

ここのところ小説は1巻だけ流し読みってパタンが多かったんだけど、珍しくシリーズを追って読み進めてます。巻によってまったく違う内容・文体だったりして著者の多彩な才能に驚きました。特に1巻上下読んでから2巻に移った時は、本を間違えたかと思ったくらい。ファンタジーな舞台からいきなり現代の東京に舞台が変わり、軽い男の話から突然パンデミックについての生々しい話に。共通となるのは主人公が医師という点だけ。と言っても、そこがシリーズの歴史を紐解く上でキーワードになるわけで。最後の方になってようやく2巻が物語の始まりを描いたものだとわかります。3巻はまた1巻のノリに戻って。女装の美少年を中心としたアンチオックスの話。で4巻はまるっきりの官能小説(笑)。ハニカム創世記です。電車で読むのはちょっと気が引けた。


読み物

ホリエモンの刑務所なう。A3とこれを読めば刑務所の面会の様子は双方の視点からなんとなくわかるようになる(笑)。しかし、刑務所の経営改善とか、医療の経営改善以上に起こりそうにない事だよなぁ。
せいめいのはなしは分子生物学の専門家である福岡伸一先生が、各方面の知識人と対談し、それをまとめた本。忙しい人は最後の章にまとめがあります。養老先生との昆虫談話が一番記憶に残っているかな。動的平衡とか擬態とか、進化論とかいう単純な言葉では割り切れない味わい深さが生命にはあって面白いな、と思いました。福岡先生のほうは、またどこかで読もうと思います。たぶん動的平衡の本あたり。
喪失と再起の物語は東北の震災を機に書かれた日本人に関する論説。読んで改めて僕らは第二次大戦とその後の戦後復興について何も知らされていないんだな、と思いました。なんとなく現代史は大学受験の中でもうやむやにされちゃうんですよね。もしかしたら意図的なカリキュラムなのかな。戦後復興とか日本人が頑張ったというよりは当時のトップがひねり出した奇策がGHQの裏をかいて功をそうしたみたいな感じに思える。一方で経産省はこの時の成功体験を根拠に自分たちのコントロールで高度経済成長をもう一度、とか思ってるのかな。黒船対策とかは一消費者としても本当にやめてほしいと思う。もはや日本の製造業は農業と同じ感じで。本当に守るべきなの?というところまで来てしまった感はある。

2015年2月4日水曜日

2015年1月の読書

1月はbooklog的には30冊とかなってるけど、大掃除の際に未登録だった本を何冊かまとめて突っ込んでるので、読んでるペースは実質同じくらいのはず。今年もモチベーション維持のために当面は面白かった物をピックアップしていこうかと。

教養

まずは先月の続きでファスト&スロー。著者のノーベル賞に繋がったプロスペクト理論についても登場する下巻。下巻は特に意思決定におけるバイアスの除去について重要な知見を与えてくれます。経営者、実業家、会社の幹部の人たちは当然知っておくべき知識だと思いますが、あまり浸透していないのかな。
逆に広告代理店や弁護士、代議士なんかは、この辺りの知識を巧みに使って商売してるのだから、世の中ちょっと怖いな、と思いました。バイアスを避けるためではなく、意図的にバイアスの罠にハメるような応用しかされていない。ちょっと表現を変えるだけで、一般人の判断を麻痺させる事ができるわけだから、ちょっとした殺戮器官ですよね。
それこそ義務教育で主要科目として教えておかないと、まともな民主主義は機能しないな、と思いました。

二つ目は標準模型の宇宙。これも良書だった。理系大学生レベルなら安心して読める程度に書かれてます。図解知識本よりちょっと本格的に素粒子物理について理解するには良い本。ゲージ理論の概要理解に向けて各章で必要な知識を身につけ、最後に現状での実験物理の限界について書かれて終わる感じ。次の世代の加速器がエネルギー10桁上げないと意味あるデータが取れない、とか言われると、ちょっと今後の劇的な進展は望めないのかなぁ。本の中で2010年までには発見できるはずと言われてたヒッグス粒子も正式な発見は2013年にずれ込んだし。素粒子物理の研究がサチってくるとなるとSFな未来を夢見る者としては寂しいですね。

次は政治経済って事で池上さんの知らないと恥をかく世界の大問題。シリーズになってて、これは1冊目。政権交代直後に書かれた本なので、その辺に対する期待に関しては残念でした、という感じですが。
アメリカ中心の経済の終焉、という前提で今後の世界の動きを読んでいく。宗教の違い、資源の流れ、教育のあり方などに焦点を当てています。
気軽に読めて、わりと面白かったので、続きもボチボチ読んでいこうかと。

で、教養系の最後はプラトンのソクラテスの弁明クリトン。ソクラテスの弁明だけ読むと、ソクラテスって本当に実在したのかなぁ?という印象がありました。ツァラトゥストラのイメージに近い……まぁ、奇人ですね。
内容としては、無神論により若者をたぶらかしているという理由で死刑の裁判にかけられた時の弁明演説の記録、という体裁ですが。実際はプラトンによる創作要素も多分にあるのでしょう。
デルポイの信託で世界一の賢者と言われ、反例を示すために賢者、エンジニア、アーティストを戸別訪問。賢者に対しては、「自分の知らないことがある」事を知っている自分の方が賢いとし、エンジニアに対してはなるほど専門知識では負けるが、それによって全てにおいて賢いと勘違いしている点で愚かだと批判、アーティストは自分の作品について、まわりの批評家の方がよほど作品を理解しているため、信託を伝えるための巫女同然で本人自身には価値がないと見下す。結果、国中の知識人に嫌われ、告発されてこの裁判。見事なとんでもっぷりです。基本、死刑には狼狽えず、裁判でも媚びず、と毅然とした態度で望むわけですが、判決後の「お前らは呪われる」的発言はちょっとした綻びですね。
クリトンはその後の話。死刑執行前夜に脱走を進めるクリトンと、それを断固として受け入れないソクラテス。国家と法についてあれこれ議論して、死刑を受け入れる、と。しかし、当時ソクラテスは70歳と聴くと、そこまでの迫力は感じないかな。そういう意味でも史実なのかもしれないけど。
どちらかというと対話篇としての芸術的な価値というか。力強く迫力のある文体が魅力でした。

娯楽

最初の一冊はこんなにも優しい、世界の終わりかた。たぶんbooklogで作業してたら目について図書館キューに入った本。娯楽小説としては久しぶりのお気に入り。実に見事なタイトルで。現代に生きる人の心を文字通り洗い流すような、素晴らしい話でした。本の主題は冒頭ですぐに出てきますが「限りある生命を強く意識した時、人間は優しくなれる。誰もが平等に死んでいくのに、どうしてみんな虚栄心に蝕まれながら、他人を傷つけて生きていくんだろう」そんな素朴な思いを最後まで貫いて書かれた話。つまらない文章でまとめてしまえば綺麗事のように見えてしまうかもしれませんが、そんな事実をたんたんと、それでいて心に迫るように訴えてくる。悲しい話なのに、読んでいてとても暖かくて優しい気持ちになり、何度も涙を流してしまいました。
(海外出張中に読んだので寂しくなってしまった……)
話の雰囲気としてはファンタシーというかお伽話のような不思議な空気に包まれているのですが、ときおり心理学や進化論にも思いを寄せてしまう、そんな描写が妙に心を現実に引き止めて、単なる物語以上の物として心に焼き付きました。
技術的な面では、構成にも凄く感心してしまって。とくに1章から2章に移る展開は見事だな、と思わず読んでいて震えてしまいました。葉鍵好きにはお勧め。

次の1冊は飛ぶ男……むしろがっかりの1冊なわけですが、敢えて取り上げたいな、と。まだ安部公房が存命していた頃、インタビューなどで執筆中として語られる事も多かった、いわゆる「スプーン曲げの少年」と呼ばれていた作品の遺稿。カンガルーノートより前から書かれてたにも関わらず、結局完成しなかったんですよね。残念。もっともカンガルーノートの完成度の高さを考えれば、あちらが世に出た事の方が結果としては良かったのかも。ともあれ、未完の遺作が出版されている事を知りドキドキしながら手に取りました。
冒頭から文字通り飛ばしてるな!って期待以上の出だしだったんですが、途中から文体も視点も乱れ出して、中盤ではメモ書きの寄せ集めレベルの体裁。これから話が始まるか……ってところで前半終了。
後半は同じアイデアを元にした別テイクにも見えるけど、どうにも文章が稚拙だし、何よりも話の構成が素人くさすぎるので、後から弄られた部分かなぁ。まぁ、ちょっとこれはないな、と。
出版を楽しみに待っていた作品ではあるけど、この状態だったら公開しないほうが良かったのでは、と思ってしまった。あるいは未完なら未完らしく走り書きを集めた資料集くらいの方が価値はあったと思う。まぁ、ファンとしては冒頭だけ読んでも物凄いインスピレーションは受けたわけですが。それでも寸止めどころか、ドタキャンくらいのガッカリ度なので、一言言わずにはいられない……といった所です。

娯楽最後の1冊は天冥の標。日本製のシリーズ物のSF。アンドロイドは電気羊の〜の話を書いた後に同僚から勧められてキューに入りました。ノリとしては日本falcomのRPG(特に英雄伝説系)が好きなら気に入るかも、って感じですね。なので僕も気に入ってます。無理に遠い未来を書かず、宇宙に移民してはいるけれど、諸般の事情で科学技術が停滞して宇宙大航海時代のロストテクノロジーに頼ってる……みたいな設定はアリかな、と思いました。主人公が医者というのも日常と非日常をスムースに繋げて話を展開するのに一役買っていると思いました。同僚から感想聞かれて真面目に答えたら「萌え」回答を期待されてたみたいで……ちょっとキャラの読みがずれたか。個人的には研修のセールスのお姉さんがめちゃくちゃ好みでした。関係無いですが。

芸術

Computer Historyは良くある類のレトロなコンピュータの写真集。安藤さんが紹介してたのを見て、表紙が気に入ったので勢いでジャケ買い的な。

交響曲入門は交響曲の形式についての説明を期待してたんだけど、どちらかと言えば成り立ちについての簡単な歴史的背景。あとは時系列にそって作曲家とエポックメイキングだった交響曲について、個別に評論。楽典はある程度納めてる人向けの本ですね。
とは言え、わりと知らなかった事も多くて。例えば、もともと交響曲はクラシックの本流じゃなかった、というのは意識した事なかった。声楽→協奏曲というのが境界を中心とした本流の流れで。舞曲→オペラ→シンフォニア→交響曲という傍流がベートーヴェンの深刻な取り組みで器楽の集大成という地位を確立。でも、ほとんど同時に完成形になってしまったので、その後も時間で見るとそれほど長い間クラシックの中心にいたわけでもない。
協奏曲の方は、ピアノ協奏曲みたいな単一ソロのイメージが強いけど、声楽からの流れで言う協奏曲は交互にソロを取るリトルネロ形式。Jazzとかわりと協奏曲に近いよなぁ。
ブラームスとブルックナーがほぼ同時期の人ってのも音しか聴いてないと想像もできない事実ですね。期待とは違ったけど面白く読めました。

2015年1月8日木曜日

12月の読書

12月は14冊。読み終わらなかったもの、全巻読み終えてないものとかあるけど、わりと面白い本が見つかった。ちなみに年間通算では141冊。

娯楽

Apple II本は参考になるかな、と思って読んでみたんだけど、思いの外面白かった。同僚がAppleの歴史の中で語られたりしていて、やっぱすげーなー、とか思った。
しかしWozはやっぱり凄いけど、バランス感覚はないんだろうなぁ。気持ちは凄くわかるんだけど。技術的な資料としても価値のある良い本でした。

続いて成毛さんの歌舞伎本。教養としての歌舞伎を丁寧に説明しているし、何よりも読んでいてワクワクしてくる。読み終わると同時に歌舞伎手帳とオペラグラス、そしてチケットを購入。年末に見てきましたけど面白かった。これは確かに趣味として良いかも。しかし客層に驚いた。もちろん年配の方がメインではあるんだけど、20代くらいの若者も沢山いた。クラシックコンサートなんかよりずっと活気ありますね。

教養

ファスト&スローは認知心理学の権威による著書。
人の判断にまつわる研究の成果を詳しく記した本。ファスト&スローと言われると脊髄反射と脳かと早とちりするけど、実際には脳を構成する2つの思考システムのこと。ファストは直感的な判断を司る自動運転プログラム群、システム1。スローはいわゆる人間的な知的決断を下すシステム2。それぞれのシステムの持つ長所と短所。問題の解決に関してそれぞれのシステムがどう関与するかが詳しく調べられている。
上巻で見られる大きな結論としては、人の脳は統計的に正しい判断を行う事が大変難しいシステムだ、という事。本質的には偏見を避けることはできず、余程の注意と教養を持ってしても是正は困難。
また、言ってみれば脳の脆弱性とも言える問題点が数多く紹介されているが、これらの弱点を突くことで印象操作や洗脳といった事がいともたやすく実践されうるし、実際マーケティングなどの分野では既に広く使われている。政治や宗教に転用されれば、戦争や虐殺にも繋がる。ある意味、核より恐ろしい研究かもしれない。
有名な平均回帰の話や、投資のプロの実力は猿以下という話も書かれていた。
しかし脳の仕組みというのは思っている以上に組織や計算機の構成法に似ている。それがこの世界の物理法則の上でやっていく最適な方法だからなのか、人の持つ先入観が計算機の設計や脳の理解に影響した結果なのかは興味深いところ。下巻は入手済みで1月に読む予定。

ギリシャ哲学の方は、哲学っていうより、ギリシア逸話集くらいの気持ちかな。結果として哲学者の話が多く出てくるってくらいで。しっかし、ソクラテスがこんなアホっぽい理由で処刑されてるとは知らなかった。巫女のお告げで一番頭の良い人間って言われて、それを信じなくて神への不遜を裁かれたのね。カッコよすぎ。あと、ドラクエIIIの巫女の元ネタってこういうとこにあったのね、とか。気軽に楽しめた一冊。

経済

資本論はGoogle Booksの安売りか何かで入手した電子書籍。マルクスの私生活の様子も含めて書かれてました。マルクスがこんなダメ人間だったとは思わなかった。働いたら負けだと思ってる、でもメイドさんは必須。そして奥さん大好きだけど、メイドさんも孕ませる。贅沢癖があって、でも同時に貧困に喘いで子供を栄養失調で亡くす。そして生涯に渡りエンゲルスにパラサイト。字が汚すぎて資本論2巻移行は本人の死後何年もかけて清書されて出版される、などなど。共産主義のイメージ変わるわー。

最後の本は半導体業界本。ところどころ筆者の私怨が見え隠れするのがマイナスポイント。素直といえば素直なんだけど。
イノベーションをただの技術革新だと勘違いしている日本の問題は同感。基本的には強い技術(シーズ)は強いマーケティングとセットにならないと機能しない。常にメリット・デメリットを併せ持つ新技術が、マーケティングの力を借りてキャズム越えを実現するのが破壊的イノベーション。
ピーターの法則については著者も独自に気づいたって点を強調してて、内容に関しては甘いな、という印象。いまや誰でも知ってることだし、その対策については色々と企業の中で実践されつつある。
成長率の話になると、少子化、高齢化問題は避けて通れない。高齢化問題に対して人道的な解を見つけるのは難しいな、とつくづく思う。特に社会の縮図として高齢化問題が濃縮された大手企業、今そこに若者が飛び込むのは自殺行為以外何者でもないな、と思わざるを得ない。大手は一度潰すのが正解なんだろうな。
あと、著者の経験談から、組織再編って局面では有能な経営者は本当に有能なんだな、と思った。けど、事業の未来を読む、という局面では、やはり誰がやってもサイコロなのかな、とも。それこそ猿より無能な一流トレーダーじゃないけど。

2014年12月5日金曜日

11月の読書

前回の読書から別のテーマでブログ書いてなかった……良くないですね。それはともかくとして、11月の読書は15冊。今月は読みたいと思った内容の本にうまく巡り会えてないんだけど、タイトルと内容が一致してなくて、予想とは違う観点で面白かった本もチラホラ。

エンターテイメント

「夢をかなえるゾウ」は確かホリエモンが「こんな本が書けちゃう水野さんが憎い」みたいに言ってたので図書館キューに入れた本。半年くらい待ってようやく順番が来た人気の本。いわゆる7つの習慣に集約されるような堅苦しい成長の秘訣を、ゆるーいガネーシャさんを通してじわじわっと脳に染み込ませてくれる。こんな本が書けるんだな、って驚いた。真面目ぶった頭の悪いビジネス書とは正反対のおふざけ優良図書。内容的にはガネーシャさんも言ってる通り、どこでも言われてる話です。

「アンドロイドは〜」の方はタイトルは有名だけど、ブレードランナーの原作だったり、Android Nexusシリーズの元ネタだったりするのは最近知った。そしてブレードランナーって事はスナッチャーだったりサイレントメビウスだったりが持つ世界観、憧れの退廃的近未来都市です。チューリングテストに合格するアンドロイドがボチボチ登場するようになった時代の、アンドロイドとそれを狩る賞金稼ぎの話。前半の世界観の説明は退屈だけど、最初のNexus 6との対峙あたりから止まらなくなってくる。自分がアンドロイドだと知らないアンドロイドとか、ぐっと来る。



視野を広げる

「歴史をつかむ技本」は今月読んだタイトルと内容がずれてる本の1つ。大人向け教科書の流れに乗ろうとして編集が煽ったと想像してるんだけど、ちょっと残念。実際の内容は歴史研究を仕事としている人たちは、どうやって歴史を紐解いているのか。教科書に淡々と書かれた史実は、何を起源にどうやって事実と認められてきたのか、という歴史研究の裏舞台に関する本。その題材として、魏志倭人伝を拠り所にした古代、正史を持つ平安時代、私的な記録も多い戦国時代などを扱っている感じ。一応、歴史の流れというか、普遍的な何かを知りたい、という想定読者の問には答えようとはしているんだけど、オマケっぽさはある。歴史研究について知るにはとても良い本だと思いました。年寄り向けじゃななくて、未来の学者に向けた本として、魅力的なタイトルで売りだして欲しい。

「フラクラル幾何学」はマンデルブロ自らが書いた本が出ているって事で、ちょろっと流し読み。難しいし。物体と観察者の距離によって実効的な次元が違ってくるでしょ?って説明は直感的だった。はじめからコンピュータ使ってCGやシミュレーションと絡めて研究が進んで来たってのも新鮮に思えた。学問って太古の昔からあって、創始者に対するリアルなイメージを持ちにくいんだけど、ここ数十年で誕生した分野の話を聞くとやっぱり不思議な気持ちになる。

「社会契約論」は先月の漫画で読破シリーズの補完としてピックアップ。なのだ調で書かれているけど、女性らしい靭やかでユーモアのある文体になっていて、硬い内容もわりと読みやすく感じる。ルソーが知りたくて読んでみたけど、ルソーの部分は少ないし難しかった。漠然と論説を追うことはできても意図まではなかなか。けど、有名な割には他の思想家に比べて無鉄砲で粗野な印象。一方でホッブズの物体論はちょっと面白い。自然科学の論法をいち早く政治の世界に持ち込んだってことらしいけど。個人を捉える際、精神は物体と同じように個別の反作用の積み重ねによるもので、個々の反応は恐怖などの根源的な感情に基づく反射と、経験・記憶との比較による判断とに分けられる、という解釈。言葉は少し違っても最新の認知心理学の理解するところと一致する。ちょっと哲学に興味が出てきた。

ってところで続けて読んでみたのが「あなたを変える七日間の哲学教室」。タイトルを間違ってしまったもう一冊の本。邦題が中途半端な自己啓発書みたいに変更されちゃってるせいで、正しい読者にリーチできていない印象。原題は「哲学者のように考える - 7日間のガイド」。第一級の現役哲学者による著書。読者と哲学者の対話の形で、哲学が対象とする問題をわかりやすく議論。〇〇学がどうのとか、誰それの考えといった事を体系的に説明する事はなく、哲学全体を説明する上で必要ならば軽く触れる程度。哲学の概念を知る上での取っ掛かりとなる本で、途中で理解につまずく事もないように書かれている。色々な分野で見かける囚人のジレンマ、哲学の視点で見ると、社会契約の話に繋がるってのは読んでいて「おぉ、そうか」と。他の章では神経科学、言語学などとの繋がりも見えてきて学問は色々なところで繋がっているんだな、感心しました。アリストテレス「厳密性を求めるなら、そのことがらにふさわしい程度の厳密性を求めるのがよい。教養のある人は、どのことがらにどの程度の厳密性を求めていいかを知っている」という言葉はこの本の中で気に入った言葉の1つ。普段、計算機を相手にしていると、つい全てが完全でなければいけないという勘違いをしがちなので。自分への戒めとして。さらには過度な品質管理をお家芸として衰退した日本の製造業に対する戒めとして。イヌイットの自立できなくなった両親を流氷と共に流す慣習の話は、本編とは直接関係ないけど、今の少子高齢化社会で行き詰まった日本に生きる者としては刺さる内容。あとがきの自殺についての話もそうだけど、日本はもう少し西洋哲学的な考え方を積極的に取り入れた方が良いのかもしれない。儒教的な道徳観、教育制度との対比として。もともと純粋に哲学的な話に興味があって読み始めたんだけど、最近受けてるグローバル・コミュニケーションの研修での問題と重ねて考える事が多かった。

どうする日本系

危機感持ちつつも自分は安全な場所に逃げこんじゃってて卑怯なんですが。自分なりの考えは持ちたいな、とは思っているのです。ってことで、どんな事を考えてる人がいるのかな、この10年日本は何を失敗したんだろうってテーマで選んでます。この手の本は図書館キューが長いので、思い出した頃になってポツポツと手元に届きます。後者について言えば、自分が「これはもう駄目だ、どうにもならない」って見限って来た物が、世間ではどう判断されてるか。それを確認したいというのも正直なところあります。

で、まずは「日本の論点」から覚えているテーマについて徒然に。
最初の論点はバブル後の日本経済について。ケインズのマクロ経済が一切通用しないグローバル資本主義について軽く触れている。じゃぁ、いったい何が起きてるの?って点については、藤沢数希の「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」が詳しかったな、と今になって思えました。同著者の他書は今のところ微妙なんですが、この本だけは良い気がしています。
地方分権問題については橋下は俺が育てた、的な話なんですが。大阪都構想みたいなのは背景を全然知らなかったので中立的に読みました。結局はゼネコン絡みなのかもしれませんが。
憲法については知識の修正が必要になりました。「占領軍が間に合わせで作った英文を無理やり翻訳したから、文章がめちゃくちゃ」みたいな批判をしてるので、あれ?と。たぶん池上さんの本で読んだ気がするんだけど、実は日本国憲法って民間の憲法研究会が提出した案を元にしてるんだよ、って話があって。そっちに理解が振れてたので。調べてみると「参考にした可能性もある」くらいの論調が安全みたいですね。ただ、それは別としても、実質憲法改正が不可能になってる現状は深刻だな、と思いました。
震災を起点とした原発問題。1,000年に一度の大震災を想定してインフラ整備とか馬鹿げている、というのは全くその通りだと思う。公共事業で道路の補強やっても投資になってないし、下手したら投機ですらない。稀な有事にはある程度の被害を受け入れる覚悟が必要かな、と思う。僕ら人類、期待値を計算したら飛行機事故で死ぬ確率よりも巨大隕石落下で人類滅亡に巻き込まれる可能性の方がずっと高いという話もある。わかりやすい災害にコスト割き過ぎなんですね。ただ一方で、そういう事実はあるにしても原発にはまだまだ対費用効果の高い安全対策がたくさんあるはずで。そういう事を考えて実行できれば良いのですが。世間の風当たりは良くないですね。大衆は理屈ではなく感情で動くので。まだまだ人類は野蛮です。
新しいお家芸については、みんなわかっちゃいるけどノーアイデア。バイオ、ナノテク、ロボットみたいなシンギュラリティに繋がるような研究は戦略的に研究してきたはずなんだけど。蓋をあければSTAP細胞事件だったり、外資系企業に買収されたり。宇宙開発とかもっと盛り上がらないかなぁ。

「半導体衰退〜」は元半導体エンジニア、現在コンサルというバックグラウンドを持つ著者による執筆で、技術的にもかなり細かい事が書いてあった。基本的な論調は「日本は垂直統合が強みになったアナログ時代のノウハウは蓄積していたが、主戦場がデジタルに切り替わりその恩恵として分業が可能となって以降、開発体制の切り替えが遅れて競争についていけなくなった」というもの。垂直統合=アナログ、分業=デジタルって切り口は自分にはなかったですね。デジタルでも垂直統合できればそっちのほうが有利だとは思うんですが。そのためには半導体プロセスでも世界一を競えてないと駄目。土台が転んだから上に乗ってる全てがぽしゃったわけで、どちらかと言えば不採算部門をサクッと切れない日本の雇用体制の問題だと思うのです。社内政治的にもそれこそ増税したら解散必至な内閣と一緒で、刺される前に実行、運良く実行できてもいずれ消される、みたいな。
あと現場の雰囲気で言ったら、末端の現場が力を持ちすぎていた事が、寿命を縮めたかな。研究より開発、開発より品証。過去の成功体験に強く縛られた近視眼的な経営判断を続けた結果、技術への正しい投資ができなくなってしまった。現在抱え込んだ技術者を大切にするあまりに、時代の変化に合わせて体制を変えることに二の足を踏んでしまった事が大きい。いずれにしても雇用制度に本質的な問題がありますね。

2014年11月1日土曜日

10月の読書

10月に読んだ本は17冊。ちょっと減った。読書の代わりに電車でニュースとかメールチェックするのを止めてたんだけど、Inboxアプリ使うようになってから通勤時間潰しちゃう事が増えた。慣れれば20冊くらいに戻って安定に入るかな。ぐっと来る本が少なかったのも敗因か。

小説

その時僕がどんな話をしていたのか覚えていないけど、同僚から「まさに虐殺器官の世界観ですね」と言われてその場で僕の図書館予約キューに入った本。ナノテク、認知心理学、チョムスキー、ミーム、遺伝子。最近興味を持って読んでいる本とテーマがモロ被り。出てくるパイソンのスケッチもどういうわけか知った物ばかり。世の中ほかにネタはないのかと言いたくなるほどの同調っぷりで、同僚の直感は正しかった。作者と世代も近いし、僕もスナッチャー大好きだったからなぁ。読み始めの印象では、文章は冗長でリズムもイマイチ、多少の読みづらさを感じさせる文体なのだけど、独特の艶めかしい死体描写と近未来の世界観にすぐに引きこまれた。文体に関しては後半になると安定してくる。構成的には伏線が少ないわりには飽きずに読めたとは思う。贅沢を言えば、死者の国をもう少しうまく書き分けられたらもっと立体的な作品になったかな、とも思うけど。ウェットな描写を死者の国側に押し込めるとか。終盤はやや疑問の残る展開もあり、最後の大きなオチに向かって強引に進んでいる感じではあったので、やっぱり伏線がもう少しあっても良かったかな。
「俺が生きる意味」のほうはガガガっぽいな、と。ストーリーらしいストーリーもないまま、いきなり化物に惨殺されまくる。アクションシーンの描写力はなかなかだけど、構成力はちょっと。読んでいて話のテンポがブレまくるのと、伏線でもないのに脇道にそれるのとで、読みながら振り回されがち。ただ、構成しっかりしちゃうと、今度はストーリーの面で物足りなくなりそうだから、良くも悪くも微妙なバランスで成り立ってるのかも。これ以上ない意外な結末で2巻に続く……どうしたものか。


まんがで読破シリーズ

先月読んだ本の中で社会契約ってなんだっけ?と思って探したら謎のまんがシリーズを見つけたので気になっていくつか予約してみた。まんがで読破……とは言うものの、読破したところで実際には各著書の序盤の主題に触れただけ。興味を持った人はぜひ原著を〜的なもの。まぁ、でも僕の場合はその程度で良いかも。
選んだ本の性格もあるけど、いまのところ必要以上に感情に訴えかける系になってる気がするので、一度原著読んでみて、どのくらい歪んで描かれてるか確認しないと……。

業界モノ

CD売れないって騒いでるけど本当に音楽業界大変なの?と思って読んでみた業界本2冊。コンテンツ市場は10兆円規模、うち音楽は5000億弱。コンテンツとしては書籍と動画でそれぞれ4割超、音楽とゲームでそれぞれ1割弱、という感じ。思った以上に書籍が強いのと、音楽が弱いのとに驚いた。コンテンツとしての音楽はまだまだ成長の余地ありなんだな、と。世界市場の約半分が日本って事を考えると、海外ではもっともっと弱い。そもそも騒いでるのはレコード会社。レコード会社を中心としたプロデュース形態から、イベント会社による企画運営を中心とし、コンテンツ配信はあくまでも広告、というモデルに移行しようとしているだけですね。レコードが出始めた頃とは正反対の力学です。
再販制度とCD+DVD抱き合わせ問題、Amazonによる既得権益への攻撃などの話題も読んでいて面白かった。
「メディアの苦悩 - 28人の証言」は新旧メディア関係者の苦悩を語ってもらい、これからのメディアについて考える、という内容。なんだけど、第一章に関しては印象操作としか思えない酷いインタビュー記事。編集後の記事で会話のキャッチボールすらできてないってのは意図をもって編集したとしか思えない。
二章以降は僕みたいに社会の仕組みを知る前にインターネットにどっぷりはまった人には考える事の多い内容。視野が広がった。

学問系

今回、この分野の読書はイマイチだった。最初の2冊はサンタフェ系のお話。科学というよりはエッセイに聞こえるし、今の僕にはトンデモと区別がつかないのが実情。もう少し入門的な内容を地に足がついた形で説明してくれる本はないものか。
「利己的な遺伝子」は完全に読まなくて良かった本なんだけど、記録のために敢えてピックアップ。「柔らかな遺伝子」とセットで薦められる例も見るんだけど、個人的な感想としては「柔らかな遺伝子」を読めば十分。フォーカスは違うんだけど、自然淘汰については現代ではあまりにも知られすぎていて、改めて読む意義は小さい。前書きと後書きだけで一冊の本になる分量には圧倒。この辺はさすが古典。
そう言えば、この辺の本を読んでいてパレートの法則とか、たんなる経験則じゃなくて、自己組織化と関連してたりするのかな、とか思ったんだけど、調べてみたらやはりそういう考え方もあるらしい。そう言えば大学でサイバーカスケードの研究してる人の話を聞いたんだけど、カスケード規模はべき乗分布って話を聞いて、こっちの世界でやったほうが良いんじゃないの、と思った。
ファインマンの本は量子電磁力学の考え方について説明した本。全然直感的じゃないものを(慣れれば)直感的に理解できるように説明してて凄い。高校物理の最後、光子と電子で混乱した頃から大学の電磁気が出てくる前の間に読むのが良いのかな。この辺り、わかってたつもりでも、ちょっと考えだすと理解を超えてる現象が多いことに気づき悲しくなった。
前から読んでた生物本の第4巻は進化論。次の5巻でシリーズ終了。生物に関して非常にざっくりとした俯瞰が得られつつある。他の専門分野の人たちが何を問題にして、どういった道具を使って謎を究明しようとしているのか、知れば知るほど面白いです。

2014年10月3日金曜日

9月の読書

ニコファーレ関連でペースが落ちた9月。最後にちょっと追い上げたけど読めたのは14冊でした。半分忙しかった事を考えると、こんなもんか。冊数は少なかったけど実りは多かった。

小説

今回の読書ブームの中でも最高の1冊になった「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」から。読み始めてすぐに感じた印象は「安部公房」版「灰羽連盟」。でも、正しくは灰羽連盟が「安倍吉俊」版「世界の終り」。ついでに言えば麻枝准も影響を受けたと言っているのでAngel Beatsが「麻枝准」版「世界の終り」らしい。村上春樹の本は短編も含めて3冊目。今までは感じなかったけど、この本からは安部公房の香りを随所から感じた。主人公の理屈っぽい思考・意識の在り方、登場人物の醸す不思議な存在感、そして不条理な世界と理系的ストーリー展開。自分が高校時代から惚れ込んだ安倍文学の世界そのものだった。加えて村上春樹特有の音楽のエッセンス。前回の読書ブームは安部公房のカンガルー・ノートで一段落しちゃった感じなんだけど、今回のブーム中にこの本に巡り会えたのは幸福。また本を読む楽しみが出来た。

もう1冊はラノベで有名すぎないあたりから適当に選んだ本。引っ込み思案で変な趣味をもつ娘は嫌いじゃない。最後の展開は独特のノリを活かしつつも魔法少女モノの王道をオマージュって感じで。新人作家の初々しさが作品の雰囲気にマッチしてるし、好きな物を書いてるって愛が感じられた。ロープライス¥1って表示されてる(投稿日10/2現在)と申し訳ない気分になるけど。

安部公房関連

そして安部公房に戻る、と。もう振り返る作家なんだなぁ……。という事で、1つ目は「安部公房とわたし」。安部公房の愛人だった女優の山口果林さんが大学入試での安部公房との出会いから別れの日までを記した本。実際の日記をかき集める形で編集したのか、日々の細々とした出来事についての短いメモ書きを集めたような構成になっている。安部氏のプライベートについて知る機会はなかったのでなかなか貴重。作品の取材や演劇の話も出てくるので、安部氏とともに歩んできた人なのだな、と妙に感心したりもする。ただ、浮気中の最初の妻とのやり取りなんかは生々しくて重い。

もう1冊はチョムスキー。インタビュー中心なので、これで何かを理解できると思わないほうが良いかも。チョムスキーと生成文法について知ったのは安部公房「死に急ぐ鯨たち」を読んだ時だったと思うけど、あちらもインタビュー中心でこの本と雰囲気が似てた気がする。いつかチョムスキーについて知ろうと思って20年経ってようやく読んだ本がこれでした。文法の構造(最近の翻訳だと統辞構造論?)も読まないとですね。

短編

ロシアの音楽家はみんな大好きプーシキン。って事でチャイコフスキーのオペラで有名なスペードの女王。スイスに出張に行った際、たまたまホテルがオペラ座の近くで、本当にたまたま出張中にこの演目をやってたんですよ。これも高校の頃からの因縁の1つ。ついでに言えば、あとはオネーギンと未完7番が見れればチャイコフスキーは満足。で、原作が青空文庫経由でKindle化されてたので。オペラのストーリーはかなり原作に忠実ですね。大団円は流石にオペラ向けに大幅に書き換えられてるようですが。原作は昔ばなしみたいに各登場人物の後日談を淡々と語るような地味な終わり方でびっくりする。これが当時のロシアの作風なのかな。

最近のぷちお気に入り夢野久作さんで瓶詰地獄。妖精ではない。最後の瓶は……怖い。この心に刺さってくる感じは夢野作品の特徴ですね。

技術書ほか

GLES 2.0入門書。GLはいわゆる黄金本で勉強しただけだったので、もう少し現場視点で書かれた本を復讐がてら読んでおこうかな、と。ついでだからmobileフォーカスなら尚良し。応用編は今現在読んでいるところ。この辺りを読みつつ自分のAndroid用のJavaライブラリにAPIを足してジェネラティブ・アートのサンプルコード(for Processing)を動かしてみる、とかチマチマやってます。本の内容的にはAndroidとiOSそれぞれ固有の下準備についての解説が少し。その後はAttributeとUniformを使ったシェーダーの基礎とテクスチャの説明、あと行列を使った座標変換についても軽く触れてる。情報少なめではあるけど最近のモバイル端末(Nexus5/7/10、iPod Touch 4th/iPad 3rd)でのglGetIntegervが返す値の比較なども。対象言語はC(++)。AndroidはNDK前提。Javaでも基本は一緒なのでimport android.opengl.GLES20で書きたい人も読み替えながらなんとかなるかな?Bufferの扱いが特殊なのを除けば簡単になってる部分のほうが多かった。エラーメッセージの文字列の扱いとか。BufferもJavaに詳しい人にとっては常套手段なのかな?しばらくエラー・メッセージに悩んだのでメモ書きしておくと、

@Override public FloatBuffer createFloatBuffer(int length) {
return ByteBuffer.allocateDirect(length * 4).order( ByteOrder.nativeOrder()).asFloatBuffer();
}
@Override public FloatBuffer createFloatBufferFrom(float[] values) {

FloatBuffer buffer = createFloatBuffer(values.length);
buffer.put(values).position(0);
return buffer;
}
こんな感じで確保、格納してやればOK。

あとは技術書じゃないけどワインの本。チームにソムリエ試験受けてる人がいて、詳しい人がいるなら好都合!と興味を持って読んでみたんだけど、やっぱり難しい。チームでお祝いとかも多くて、ワイン飲む機会も増えてきてるんで、詳しくなればもっと楽しいかなって。褒めてるのか貶してるのか素人にはわからないような暗号めいた形容詞が面白いです。まぁ、気長に覚えます。

2014年9月14日日曜日

8月の読書

先月末からニコファーレ関連でテンパッてたので読書ペースが落ちてた&ブログにしてる暇がなかったんだけど、落ち着いたので。8月の読書も7月と同じ27冊。面白かった物をいくつかピックアップして紹介。

生物・バイオ関連

ブルーバックの「カラー図解アメリカ版大学生物学の教科書」シリーズ。僕の通っていた高校では物理・化学・生物の中から2つしか選択できなかったため、医者かバイオ系を目指してる人以外は生物を選択から外してた。そんなわけで僕も生物に関する高等教育は受けておらず、ちょっとした苦手意識のある領域でした。先月読んだ本の中で良さそうな本が紹介されていたので、8月いっきに読みました(正確には3巻を読み終わったのは9月頭)。いやはや、細胞の世界の緻密さに脱帽。コンピュータとかロボットなんか、まだまだ玩具だな、と思いました。しかもこういったシステムが緻密にコードされているわけではなく、相互作用の結果として自己組織化されていくようにできているあたりが、まさに神のハック。
読んでいるうちに面白くなって同分野の本を何冊か読み漁りました。その中で気に入ったのが「マンガでわかる神経伝達物質の働き」。マンガと言っても半分以上は文章で、まとめや箸休め的にイラストが入っている感じ。でも、イラストが本当に可愛くて、それに釣られてスラスラ読んじゃいました。最後の方は精神病やドラッグについての説明もそれなりに。
「やわらかな遺伝子」は「教科書シリーズ」の2巻を読んだあたりで気になって読みました。「遺伝子すげー」って世界観から、実は生まれた後の環境によって遺伝子発現のトリガが押されるので遺伝子が全てじゃないんだよ、という流れに。でもまぁ、一卵性双生児の話を聞く限り、普通の世界に生まれてくれば、かなり遺伝子には引きずられますね。個人的な結論としては「やる気のでるホルモンを生成できる遺伝子が最強」という事で。個人の意思決定を本当に支配しているのは身体の状態であって「やる気がでない、気分が乗らない」という、さも脳内の意識が決定したかのような理由付けは、行動の後に脳が辻褄合わせに作り出しているという事実を知り愕然としました。寝てる間にベッドから落ちたら、落下する夢を見るのと同じ。人間は常に水面下で言い訳をしながら生きているわけです。
この辺を一通り読んで、ミクロな生物学に関してはなんとなく理解できた気がします。万能細胞がなぜ嬉しいのか、動物では何が難しいのか、とかその程度。研究室に配属されて手が動かせるレベルかと言われれば、まだまだ全然ってところ。でも細胞のシミュレーションとかも面白い分野だし、機会があれば飛びつきたいな、という感じではあります。次はマクロな方面を読んでみたい……って事で4巻以降に続く。



未来予想

Kurzweilの最新のSingularity本。……とにかく分厚い。普通の本なら5冊くらい読めそう。
技術は指数的に進化の速度を上げていく、という収穫加速の仮説を詳細なデータの元に検証。人知を越えたコンピュータが登場するSingularityとその先の未来を詳細に予測する。
仮説を裏付けるために詳細な記述がなされているが、カーツェルの予測する未来を知るという目的には冗長すぎる。かと言って専門家として理解できる分野の話を見ると「ちょっとこれは」と思える部分もあり(やむを得ないとは言え)中途半端な印象は否めなかった。
予測内容そのものは刺激的で、生き方について少し見なおそうと考えるには十分すぎる内容。ただ、倫理的な問題を考えずに人体改造を認めることで、人が順応できる生活の変化が技術革新に追いつけなくなったという重要な事実を無視している。
一方でサイエンス・インポッシブルはSFに出てくるような未来の技術をネタに、物理学者の観点から実現の難しさを語った本。Kurzweilの文章は刺激と同時に、年寄りの与太話に付き合ってるような退屈さが付きまとう感じだったんだけど、この本は科学の歴史などにも触れ、読み物としても十分に楽しめる。
後半は最新の宇宙論について結構なページを割いているので、実はSFをネタにしてより多くの人に(著者の専門である)現代物理に興味を持ってもらうよう狙った本かも。前半は編集の要望で後半は著者の趣味、みたいなパタンは多いですね。
未来予想としてはKurzweilよりはずっと控えめで、倫理的問題や人間の適応力不足に起因する進化の鈍化を考えると、100年くらいはこっちのほうが妥当な予測かも。ちょっと寂しいけど。


小説

夢野久作の書簡体短編3作が収録された「少女地獄」。これまでに読んだ夢野作品は「きのこ会議」だけで「んんんっ??」って感じだったんだけど、本作を読んでその世界に一気に引き込まれた。ドグラ・マグラ前の助走って感じで。一連の作品は、女性の社会進出が一つのテーマですかね。
冲方さんの本はファフナーのファンとして。冲方さんが普段どうやって小説を生み出しているのかが具体的に読めて楽しい。書き方講座というタイトルではあるけど、教科書じゃないです。


その他

「5つ数えれば君の夢」は東京女子流をモデルにした漫画。たった一度きりの人生をアイドルという職業に捧げることの覚悟みたいなのを重くなり過ぎない感じでストーリー化してます。
「なぜ日本は若者に冷酷なのか: そして下降移動社会が到来する」の著者はパラサイト・シングル、婚活といった言葉の生みの親。日本の社会が抱える現実問題を目の当たりにした。投機でしかない高等教育、独身無職で親に寄生する若者たち、老人優遇の社会制度。数字で見るここ数十年の若者世代の収入の下がり方はちょっとシャレにならない。子供が減って当然。日本は世界で最初の「元先進国」になるのか。
最後の本はただただ残念だったので。短納期で引き受けた秒間1万アクセスのシステム。「もう先方と約束しちゃったんだから、死んでも作ってね」という日本的なノリで納品して、実際に運用したら秒間1アクセス以下で余裕でした、と。日本の品質重視が空回りする瞬間。企業ももう少し冒険した方が良いんだけど、それ以前に日本人が国民性としてリンチ好きだったりクレーマー体質なのがなんとも。日本もまだまだ民度は低いのです。

2014年8月3日日曜日

7月の読書

6月くらいから本を読む習慣が復活して、いまのところ月に20冊ちょっとのペース。せっかくなので読書記録つけて習慣付けようかと。気に入ったやつをいくつかピックアップ。

小説

陰陽師は「好きだったなー、平安時代」って。宇宙皇子で散々読んだ貴族の生活。思えば、その辺の知識層への憧れが後々まで強く影響して今の自分の人生が成り立ってる気がする。田舎の人間が都会に憧れるような、そんな気持ちで知識層を見てた。まぁ、どっちも自分の中にはある。高校の頃はニューヨークの夜景の写真とか部屋に飾ってたから。でも、本当この雰囲気には惹かれるなぁ……と初恋のような気持ちで読んでおりました。定期的に続編読むかも。
あとの二冊は村上春樹。小澤征爾や坂本龍一と絡んでる本は読んだことあるんだけど、小説を読むのは初めて。東京奇譚集は短篇集で日常からふっと不思議な世界に繋がる瞬間。そんな話が何編か。スプートニクの恋人は長編だけど、やっぱりエッセンスは同じ。他の本は読んだことないけど、これが村上さんの特徴なのかな?構成が凝り過ぎてて、というかたぶん考えずに書いてるんだろうけど前半はちょっと話を追うのに神経を使う。けど、後半で話が回りだすと本当に面白い。なるほど、これが売れてる作家かぁ、と思った。過去の読書ブームでは、子供の頃は今で言うラノベばっかりだし、大学の頃はドストエフスキーとか柔らかくても安部公房、あとはSFって感じだったので。いわゆるベストセラー小説的なのは読んだことなくて、偉く感心しました。(実は6月に新宿鮫を読んでるけど。こっちも同様に感心しました)



経済関係の入門書

元々は「手元の株の処遇についてそろそろ考えないとなー」と思って読み始めた。
経済上の色々な問題って、結局のところ既得権益者によるロビー活動と、その影響で若年層への投資が不足するのが問題なのね……と思いながら読んでた。たまたま別件で読んでた記事も同じように結論付けてますね。農家にはじまり、旧メディアに多いJASRACみたいな業界団体、あと潰れかけの大企業なんかが国を貧しくする根源。あと過剰に労働者を守る法律が逆に労働者を苦しめる結果に、とか。そんな内容です。
個別に書くと、この世で一番〜の2冊は経済の入門漫画。どっちも1時間かからずに読めちゃう。それでも、このくらい知ってれば選挙で騙されないくらいの知識はつくはず。訳本なので日本の話は書かれてない。最近の日本の話は3冊目で補える。実際には僕は藤沢数希から読んだ。なんかランチの会話でたまに聞く名前だったので。失われた20年について初心者でも分かる程度の経済学の言葉で説明した本。ちょっと攻撃なところもあるので、どこまで真に受けるべきか素人の僕にはわからなかったんだけど。前の2冊に戻って読んでみた限り、同じことを言ってますね。



人のリバースエンジニアリング

最近はバイオの世界でもソフトウェアで言うところのオープンソース活動だったり、ハードウェアで言うところもDIY的な動きがあるよー、という話。細かい例がグダグダ書かれてて文章自体はさっぱり面白くない。ただ、みんなで寄ってたかってDNAを弄くり倒すってのはちょっと面白い未来かもなぁ、と。どっかのタイミングで乗り遅れないようにしないと。
で、バイオパンクがバイナリアン的な人達だとしたら、認知心理学の方はゲームの目移植、Photoshop買いたくないからGimp作ったぜ、みたいな人たちがやるようなハック。人間に入力を与えて出力を観察、結果から内部のアルゴリズムを推測して人間の仕組みを解明する人たち。学問的な名前はちょっと曖昧。96年ごろ認知神経科学って名前で大学の講義受けて感銘受けたんだけど、この本的にはその名前が出てくるのって21世紀って事になってる。いずれにせよ、この分野の発展は目覚ましくて、アミューズメントセンターに行けばふんだんにその成果が堪能できる。この本は主に視覚の説明が多いけど、視覚とか嗅覚とかハック可能なレベルまで仕組みが解明されているのに驚く。DNA側から攻めるよりは、当面はこっちのほうが筋が良いかも。DARPAが記憶を操作する技術を確立しつつある、みたいな話をチラホラ見るようになったし。



その他

日本的想像力〜は猪子くんのインタビューがメイン。非言語の話は物事の捉え方に新しい視点を与えてくれて刺激的。時代や文化の影響を受けないデザインが重要になってきているし、何かが変わりつつある感じはあるかなぁ。
2冊目はKyle McDonaldさんがワークショップで紹介されてた茶の本。日本語版が無料だったので読んでみた。岡倉天心の本だったのかー、と今更気づいた。この時代に西洋に対して強気な文面、しかも英語で世界に向けて発信していたという事実はとてつもなく衝撃的。内容にそこまで興味あったわけではないので、前半だけまじめに読んで後半は読み飛ばし。
最後のはオウム事件の本。オウム事件を通して報道の在り方や死刑制度への疑問、警察や司法の暗黒面についてたっぷり書いた本。以外なところで経済の話だったり、ホリエモン事件、最近ではSTAP細胞にまつわるリンチっぷりとかが線で繋がる。特にインターネットを通じての日本人のドロッとした国民性とか……最近辛いなぁ、と思う。森さんの話はそれなりにフィルターかかってる気がして、すべてを鵜呑みにはできなかった。オウム親派ってわけじゃなくて、単純に事件に関わった事で人生が狂い、平和に暮らしてれば見なくて済む世界を見てしまった人の持つ恨みつらみ。時々文体や構成の乱れとして見え隠れしますね。
A3の参考文献として知ったんだけど、村上春樹さんもオウム事件に関する本を出してるんですね。あの事件の前と後で日本人は変わってしまった、みたいな視点が最近の作品には見え隠れする、みたいな事をアマゾンのレビューか何かで読んだ気がするんだけど、この本で背景が見えてきた。そっちの本もそのうち読んでみたい。



って事で、アマゾン先生をのらりくらし探索しながらランダムに選んだつもりだったんだけど、思いもがけないような本が思想的に繋がってたりしますね。なんで経済と村上春樹とA3が線で繋がるのか……。やっぱりアマゾン先生のクラスタリング力は強力すぎる。

2010年3月30日火曜日

思考の整理学 (1)

電車通勤をやめてからすっかり本を読まなくなりました。
積まれていた本の中から1冊だけ鞄に入れてたんですが、今日は少しだけ読む機会があったので、読んだところを少しだけメモ(続き読むが先になるかもだし)。

という事で、表題の通り、外山滋比古さんの思考の整理学。
整理学とかいうタイトルだけど、特に考える事に関して体系化した書物というわけではないですね。「思考」に関する様々な角度からのエッセイを、どちらかと言えばごちゃっとまとめた感じ?

「グライダー」:グライダーと飛行機。詰め込み型教育の産物、自力で前へ進む事のできない人たちをグライダーに例えて批評。「自分で翔べない人間はコンピューターに仕事をうばわれる。」1986にまとめられた本にしては刺激的な台詞で締めくくられているけど、2010年になった今日、状況はどんなもんだろう? 就職難と人材不足の共存状態は、予言が的中した結果とも思えるけど、実際には大企業はまだまだグライダー人間に支配されている気はするなぁ。
続く「不幸な逆説」で述べられている、教える事を渋る事による飛行機人間の育成、という考え方は面白い。伝統芸能などで見られる教えない文化。師の業を盗もうと努力するところから学ぶ姿勢、意欲、独創性などが生まれるのではないか、という仮説。

「朝飯前」:まさに自分が修論の時期に実践していた事。一日のうち頭が働くのは起きた直後の数時間。ここまでは大学の仲間うちでも周知の事実だった。なので、一日を12時間ずつにわければ、頭が働く時間も二倍になるだろう、と。3時間寝て9時間作業〜みたいな生活だったと思う。普通に仕事して、論文も書いて、さらにバンド活動・・・となると、こうでもして時間を稼ぐほかなかった。凄い勢いで時間が過ぎていくようで、カレンダーは半分しか進まないという不思議な感覚で、実際に生産性もかなり上がった気がしました。
自分がやってた事と同じ事を筆者がしていると知って嬉しくなり、それがblogに書き留めようと思ったきっかけでもあるわけですが。さらに筆者は、朝飯を抜けば、さらにこの朝飯前の時間を長くとれる・・・と、なんだか子供じみた事まで(笑。偉い先生がこういう事を実践している、というのは生々しく、結局は努力なんだ、と思うと、なんだか救われた気持ちになります。努力でどうにでもなる世界、つまるところそれが究極の平等社会なんですけどね。民主党政権しかり、どうも日本は変な方向に向かいつつあります。

アマゾンでも誰かがレビューに書いてましたが、アイデアについてのエッセイでのべている事はジェームス W.ヤングの本に書かれている事と同じですね。学生の頃に読んで意識、実践してきたけど、アイデアが生まれるプロセスに関してこの本の解析はかなり正しい。色々な人が共感している事からも万人にとって真なんだと思う。うまくやれば凡人でも非凡のフリができる。。。はず。



#そういえば、内閣府調査の一環で面接がありました。大学院教育はどうあるべきか、というテーマで議論したのですが、つまるところ調査の趣旨は「ゆとり教育は失策だった。その分、大学院教育でフォローして、なんとか社会で使える人間に仕上げる体制を作りたい。」という事だそうです。大学、大学院の進学率が伸びていますが、今まで12年で身になっていた事を16年、18年じっくりかけて教えているだけ。こういう状況にあって、自分の子供にどう学ぶ事を教えていくべきか、非常にむずかしい問題だと感じています。未だ脳の衰えを感じる事はありませんが、知識に関しては若ければ若いほど吸収が早く、使える技術になり易いのは事実でしょう。